このページの要点
- 書類は10種類。会員規約・約款・業務委託・事業譲渡・製造委託・プライバシーポリシー・特商法表記・NDA・受講契約書・取引先とのAI利用の取り決め。
- 各項目のバッジで根拠が分かる。AIの下書きの点検記録が示せるのは、会員制の規約・約款・会則、コンサルの業務委託、事業譲渡の三種類だけ。
- AIに点検させた結果は、条番号と条名の全件照合、前提にした用語の実在、実際の重要論点への言及の三点で確かめる。
- 書面の中だけで確かめられる点は自分で、事業の実態や取引類型の当てはめが要る点は資料をそろえてから確かめる。印刷用の1枚版も付けた。
このページの結論
- 書類の種類は10に分け、それぞれ3項目、合わせて30項目を確かめます。AIの回答を点検させた場合の確かめ方は、別に3項目を加えます。
- 各項目には、根拠がAIの下書きの点検記録か、この種類の書類でよく見つかる点か、法令の確認点か、契約の実務で見られる書き方かを示すバッジが付いています。バッジを見れば、何を根拠にした確認点かが分かります。
- 自分で確かめられるのは、書面の中の食い違いや空欄、条番号や用語の実在までです。事業の実態との照合や、法令の当てはめの判断が必要な項目は、確かめきれない場合の線引きを後の節に書きました。
このチェックリストの使い方
AIで作った下書きは、契約書らしい体裁で出てきます。体裁が整っていると、中身まで整っているように見えますが、点検の実務では、取引の流れや金額、期日が書面から抜けている例が繰り返し見られました。そこで、書類の種類ごとに、見落としやすい点を三つずつ並べています。解説のページには各項目の右の「解説を読む」から移れます。全体像はAIで作った契約書はそのまま使えるかにあります。
最初に、バッジの意味を確かめてください。AIの下書きの点検記録として示せるのは、会員制のサービスの規約・約款・会則、コンサルティングの業務委託契約書、事業譲渡契約書の三つの種類に限られます。それ以外の書類は、その種類の書類でよく見つかる誤りか、法令が求める確認点として書いています。
根拠の区分のバッジの意味
| バッジ | 意味 | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| AIの下書きの点検記録 | AIで作った下書きの点検記録(3依頼者分)で見つかった点 | 依頼者が1の型は例にとどまる。傾向として読まない |
| AIの分析結果の点検 | AIに契約書を分析・点検させた結果に見られた誤り | 契約書の下書きの誤りではなく、AIの回答の誤り。1依頼者の例 |
| この種類の書類でよく見つかる | AIの下書きの記録はないが、この種類の書類の点検でよく見つかる点 | AIの下書きで見つかったとは読まない |
| 法令・公的資料の確認点 | 法令や公的資料が求めている確認点 | 記録で見つかった誤りではない。条文は基準日時点の現行のもの |
| 契約の実務で見られる書き方 | 契約の実務で見られる書き方と、起きやすい問題 | AIの下書きの誤りではない。立場により条項の重さは変わる |
バッジは、各項目の根拠がどこにあるかを示す印です。同じ表の中でも項目ごとに根拠が違います。
進め方
- 自分の書類の種類を選び、その表の3項目を順に確かめる。該当する種類が複数あれば、すべての表を使う。
- 「はい」と言い切れない項目に印を付け、右の解説のページで内容を確かめる。
- 書類が複数ある場合は、金額、日付、返金の条件、用語を並べて、書類どうしで食い違っていないかを見る。
- 確かめた日と確かめた人を記録する。法令や資料の版が変わったときに、再度確かめられる。
- 確かめきれない項目は、後の節の線引きに従って、点検に出す範囲を決める。
なお、ここに並べた30項目は、書類が有効か無効かを判断するものではありません。一般的な確認の観点であり、一つでも「はい」と言えない項目があれば、その部分を見直す手がかりにします。点検から仕上げまでの流れは点検と仕上げの流れで説明しています。
契約書・規約の種類別チェック① 会員制サービス・業務委託・事業譲渡
この節の四つの書類は、AIで作った下書きの点検記録がある種類です。ただし、記録は1つの種類につき1依頼者分で、型の件数が多くても傾向として読むことはできません。「点検の実務で見られた例として」読んでください。
1 会員規約・利用規約(会員制のサービス・コミュニティ)
確認すべき点と、根拠の区分
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 申込みを承認しない場合の基準があるか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
| 会費の決済方法・課金日・自動更新・料金改定の定めがあるか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
| 禁止事項・除名・反社会的勢力の排除・会員間トラブル・秘密保持が運営の実態に合っているか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
| 返金・解約の書き方が、消費者が相手のときの消費者契約法8条の2・9条・10条に反しないか | 法令・公的資料の確認点 | 解説を読む |
入会から退会までの流れを一本の線に書き出し、それぞれの時点で規約のどの条が働くかを照らし合わせます。申込みを受けて承認する仕組みなのか、承認しない場合の基準はあるのか。会費はいつ、どの方法で、いくら請求し、更新や料金改定はどうなるのか。ここが空白だと、トラブルのときに根拠にできる条文がありません。点検の実務では、承認を拒否できる場合の基準がない例や、課金日、決済方法、自動更新、料金改定の定めが足りない例が見られました。
禁止事項、除名、反社会的勢力の排除、会員どうしのトラブル、秘密保持は、運営の実態に合っているかを見ます。一般的な禁止事項だけで、勧誘や録音・録画、スクリーンショット、なりすましへの定めがない例がありました。返金や解約の定めは、会員が消費者であれば消費者契約法の観点が別にかかります。事業者の債務不履行で消費者に生じた解除権を、あらかじめ手放させる条項は無効とされ、解除に伴う違約金は、同種の契約で通常生じる平均的な損害を超える部分が無効とされます[1]。詳しくは取引の流れの抜け、運営者保護の抜け、受講契約書の返金のページにあります。
2 サービス提供約款・会則
確認すべき点と、根拠の区分
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 約款・会則・規約の役割分担が決まっているか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
| 内容・特典の変更と停止の権限、免責があるか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
| 会則に秘密保持・禁止事項・除名・反社会的勢力の排除があるか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
約款、会則、規約の三つを並べて、同じ内容が二重に書かれていたり、互いに矛盾したりしていないかを見ます。役割の分け方の一例は、約款が契約の条件、規約が利用のルールと禁止事項、会則が会員の行動原則と運営者の権限です。分け方に決まりはありませんが、どこに何を書いたかの対応表を作っておくと、改訂のたびの抜けを防げます。
内容や特典の変更と停止の権限、そのときの免責は、サービス紹介のような細かい記載が約款に入っている場合に特に問題になります。変更する権限が書かれていないと、機能の変更や特典の終了のたびに、会員の同意を求められる状態になりかねません。点検の実務では、特典の期間、内容の変更、終了の定めがない例が見られました。三つの文書の関係は会員規約・約款・会則のページで配置表にしています。
3 業務委託契約書(コンサルティング等・受託者側)
確認すべき点と、根拠の区分
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 金額・追加費用が別紙まで埋まっていて、計算が矛盾しないか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
| 業務範囲が有資格者の独占業務に及ぶ書き方になっていないか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
| 成果物の著作権の帰属と利用範囲、賠償の上限と請求期間が定められているか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
金額、追加費用、違約金の計算は、本文と別紙を並べて確かめます。点検の実務では、本文が別紙の追加費用の表を参照しているのに、別紙に金額表がない例や、違約金の下限と上限が一定の場合に逆転して金額が確定しない例が見られました。別紙(契約書の本文の後ろに付ける表や一覧。本文から参照されて契約の一部になる用語集)の参照先は、すべて実際に開いて中身を確認します。
業務の範囲が、有資格者の独占業務に及ぶ書き方になっていないかも確かめます。助言や資料作成の支援と、規程の作成そのものは別であり、書き方によって境界があいまいになる例がありました。成果物の著作権の帰属と利用範囲、賠償の上限と請求期間は、受託する側に特に影響します。契約の性質は準委任(結果ではなく、事務を行うこと自体を引き受ける契約用語集)か請負かで報酬や責任が変わるため、コンサル業務委託のページで読み方を説明しています。
4 事業譲渡契約書
確認すべき点と、根拠の区分
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 譲渡する資産の目録が実態の全部を覆い、譲渡しないものも書いてあるか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
| 代金の支払と引渡しの順序が決まっているか(分割払い向けの条項が混ざっていないか) | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
| 許認可・指定が前提条件として扱われているか | AIの下書きの点検記録 | 解説を読む |
譲渡する資産の目録が、事業の実態の全部を覆っているか、譲渡しないものが書いてあるかを確かめます。点検の実務では、資産目録が事業の実態を覆っていない例や、債権や契約上の地位を含むと読めて、譲渡しない意図と食い違う例が見られました。目録の項目を、実際に使っている設備、契約、債権、在庫と一つずつ照らします。
代金の支払と引渡しの順序は、一括払いなのに分割払い向けの条項、たとえば期限の利益(期限が来るまで支払わなくてよいという債務者の利益用語集)の喪失の条項が混ざっていないかを見ます。許認可や指定が必要な事業では、許認可や指定は事業を譲渡しただけでは当然には移らないものがあるため、前提条件として扱われているかを確かめます。流れに沿った点検表は事業譲渡契約書のページにあります。
書き方の例(型として作り直した例) 点検記録から型として作り直した例(いずれも1依頼者分の記録に基づく例で、傾向を示すものではありません)
追加費用の別紙
中途解約の違約金
一括払いの事業譲渡と期限の利益
契約書・規約の種類別チェック② 製造委託・プライバシーポリシー・特商法表記・NDA・受講契約書
この節の五つの書類には、AIの下書きの点検記録がありません。点検の実務で繰り返し見つかった点か、法令が求める確認点として書いています。「AIで作ったから起きる」とは読まないでください。
5 製造委託・取引基本契約書
確認すべき点と、根拠の区分
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 損害賠償の条の構造が壊れておらず、上限が他の条にも及んでいるか | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
| 数値・期日・営業日と暦日・但書が整合しているか | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
| 法律の名称が現行のものか(下請法から取適法への改称など) | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
取引先から渡された書式を含む、製造委託や取引基本契約書でよく見つかる誤りは、条文の組み立てと数値の整合です。賠償の条で第1項の本文が消えて各号だけが残っている例や、上限額が他の条に届くのか読み取れない例が見られました。営業日と暦日が混在して期限が確定しない例や、期間を短縮したのに但書が意味を失った例もありました。
法律の名称が現行かも確かめます。いわゆる「下請法」は、令和7年の改正で改称され、取適法(中小受託取引適正化法)の通称で呼ばれる法律になって、令和8年1月1日から施行されています[5]。旧称のまま残っている書式が見られます。取適法(下請法が令和8年1月1日の施行で改称された法律の通称用語集)の対応は製造委託・取引基本契約書とAIの回答・分析の確かめ方で説明しています。
6 プライバシーポリシー
確認すべき点と、根拠の区分
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 利用目的を特定して書いているか(個人情報保護法17条) | 法令・公的資料の確認点 | 解説を読む |
| 外部サービス(生成AIを含む)への提供・委託・外国にある第三者への提供を整理したか(25条・27条・28条) | 法令・公的資料の確認点 | 解説を読む |
| 安全管理措置と漏えい等が起きたときの対応を書いたか(23条〜26条) | 法令・公的資料の確認点 | 解説を読む |
プライバシーポリシーは、点検記録の件数ではなく、法律が求める項目から確認します。事業者は、個人情報を扱うときに利用の目的をできるだけ具体的に決める必要があり(17条)、情報を取得したら、すでに公表済みの場合を除いて、早めに本人へ知らせるか公表します(21条)[3]。書面の利用目的の欄が「サービスの向上のため」の一言だけになっていないかを見ます。
外部のサービスに個人データを渡している場合は、それが委託に当たるのか、第三者への提供に当たるのか、提供先が外国にあるのかを整理します[3]。生成AIを業務で使い、指示文に個人データを入力する場合も、同じ観点で整理します。安全管理措置や、漏えい等が起きたときの対応も、ポリシーと実際の運用がそろっているかを確かめます。権利と個人情報と自社の生成AI利用の告知とPP記載のページが対応しています。他サイトのプライバシーポリシーのよくある不備20も、点検の順番を知るのに役立ちます。
7 特定商取引法に基づく表記
確認すべき点と、根拠の区分
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 返金・解約の欄が契約書・規約・申込み画面と一致しているか | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
| 申込み画面(最終確認画面)に必要な表示があるか | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
| 価格・追加費用の表示と、事業者情報を省略できる条件を正しく書いたか | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
特定商取引法に基づく表記は、点検記録7件のうち、返金・解約の欄が法令、規約、契約書と合っていないとの指摘が4件、表記と規約・契約書の食い違いが3件、申込みの最終確認画面の表示の不足が3件、価格や費用の表示の不足が3件ありました。表記ページだけを整えても、申込み画面が足りなければ直りません。通信販売の広告には、価格、支払の時期と方法、提供の時期、申込みの期間、撤回や解除に関する事項などの表示が求められ[4]、申込み画面にも、分量とこれらの事項を表示することが求められます[4]。
事業者の住所や電話番号を、請求があったときに開示する形で省略するには条件があり、条件を誤解した例も見られました。住所を載せたくない場合の考え方は、他サイトの特定商取引法に基づく表記の書き方が全体像を整理しています。本サイトの特商法表記のよくある誤りは、表記を点検する観点に絞っています。
8 NDA(秘密保持契約)
確認すべき点と、根拠の区分
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 損害賠償の上限と、帰責事由の書き方 | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
| 秘密情報の定義と、除外事由の書き方 | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
| 存続期間・返還や消去・再委託先への開示が互いに整合しているか | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
NDAは、点検記録10件のうち、損害賠償の設計についての指摘が7件、秘密情報の定義が6件、存続期間が5件、再委託と第三者への開示の食い違いが4件、返還・消去の設計が4件ありました。賠償では、帰責事由が書かれず責任の範囲が読み取れない例や、上限が小さすぎる例がありました。賠償の範囲は民法が通常生ずべき損害と特別の事情による損害を区別し、違約金は賠償額の予定と推定されます[2]。
秘密情報の定義は、「その他一切の情報」のように無限定な書き方と、明示した情報だけに絞る書き方のどちらにも弱点があります。営業秘密に当たるかを見るときは、秘密として管理されているかが要素の一つになるため[6]、範囲を絞って管理しやすくする方が有利な場面があります。NDAのよくある誤りのページで型別に説明しており、渡された案を点検する手順は相手方のNDA案を点検する手順を参照してください。
9 受講契約書・申込書
確認すべき点と、根拠の区分
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 中途解約・返金の定めが「全面禁止」になっていないか | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
| クーリング・オフが関係する取引の類型を整理したか | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
| 分割払いが割賦販売に当たらないか確かめたか | この種類の書類でよく見つかる | 解説を読む |
受講契約書と申込書は、点検記録11件のうち、中途解約や返金を全面的に禁じる、全額の支払を求める、返金額の算定基準がないといった指摘が7件、クーリング・オフと取引類型の整理の誤りが6件ありました。返金の定めは、受講者が消費者であれば消費者契約法の観点が及びます[1]。免責や責任制限が同法に反するおそれのある書き方も6件で見られました。
クーリング・オフは、法律が定める取引の類型ごとに認められます。訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供はいずれも書面を受け取った日から8日とされ[7]、通信販売の返品の制度は商品と特定権利が対象で、役務は対象外です[4]。分割払いを自社で受ける設計では、2か月以上の期間にわたり3回以上に分割して受領することを条件とする契約が割賦販売に当たり得ます[8]。この点は点検記録でも見落としが見られましたので、クーリング・オフと割賦販売の整理のページで説明しています。他サイトのクーリング・オフ対応のチェックリストと記録の残し方も、運用面の確認に使えます。
契約書・規約の種類別チェック③ 取引先との生成AI利用の取り決め
取引先との間で生成AIの利用を取り決める条項は、「AIの下書きの誤り」ではなく、契約の実務で見られる書き方と問題の型として整理しています。確認できた範囲の点検記録では、業務委託やNDAで取引相手のAI利用を取り決めていた25依頼者分のうち、禁止型が9、条件付き許可型が16でした。立場によって条項の重さが変わるため、受託する側か発注する側かを先に決めてから確かめます。
10 取引先との生成AI利用の取り決め
確認すべき点と、根拠の区分
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 禁止にするか条件付きで認めるかを決め、「AI」の範囲を定義したか | 契約の実務で見られる書き方 | 解説を読む |
| 入力してよい情報の区分と、学習されない設定の確認方法があるか | 契約の実務で見られる書き方 | 解説を読む |
| 出力の権利・責任と、申告・記録・停止指示があるか | 契約の実務で見られる書き方 | 解説を読む |
最初の項目は、禁止にするのか、条件付きで認めるのかを決め、「AI」の範囲を定義することです。範囲を定義していない例では、クラウド型のサービスだけを指すのか、社内の環境で動くものも含むのかが読めません。二つ目の項目は、入力してよい情報の区分と、学習されない設定の確認方法です。個人データを入力する場合について、個人情報保護委員会は、利用目的の範囲内かを確認し、入力が機械学習などに使われないことを確かめるよう注意喚起しています[10]。AI事業者ガイドラインも、個人情報や機密情報を不適切に入力しないことを利用者の取組に挙げています[9]。
三つ目の項目の出力の権利と責任は、文化庁が、生成過程を確認できる状態にしておくことや、取引の対象にするときにAI生成物であることを説明できるようにしておくことを勧めています[11]。申告や記録、停止指示を置いても、確かめる手段がなければ実効性が弱くなります。順に禁止と条件付き許可、入力してよい情報、成果物の権利のページで条項の書き方を扱い、全体の組み立てはAI利用ルールの作り方にまとめています。
AIに契約書を点検・分析させた結果の確かめ方
AIに契約書の点検や分析をさせて得た回答は、契約書の下書きとは別のものとして確かめます。点検の実務で、1依頼者の例ですが、AIの分析が点検対象の契約書の内容と合っていなかった例が見られました。傾向として一般化はできませんが、回答を使う前に確かめる三点は、どの契約書にも当てはまります。
AIの回答の確かめ方(3項目)
| 確認すべき点 | 根拠の区分 | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| AIが挙げた条番号と条名を、契約書と全件照合したか | AIの分析結果の点検 | 解説を読む |
| AIの文章が前提にした用語が、契約書に実在するか | AIの分析結果の点検 | 解説を読む |
| 契約書の実際の重要論点に触れているか | AIの分析結果の点検 | 解説を読む |
一つ目の条番号と条名の照合は、AIが挙げた「第N条(○○)」を抜き出し、契約書の同じ番号の条名と全件を突き合わせる作業です。二つ目は、AIの文章が前提にしている用語を、契約書全文で検索し、一度も出てこない語がないかを見ます。三つ目は、AIが指摘した論点が、その契約書の実際の重要な論点に触れているかです。手順と条番号の確かめ方はAIの回答・分析の確かめ方で詳しく説明しています。
法令の条文は、e-Gov法令検索で基準日を決めて現行のものを取得して確かめます。法改正のたびに同じ番号の本文が変わることがあるため、古い資料の条番号をそのまま引かないように注意します。確認できなかった条番号は、番号を外して趣旨だけを書いておくのが安全です。
自分で確かめられないとき|確かめやすい点と確かめにくい点の線引き
30項目のうち、書面の中だけで確かめられる項目と、事業の実態や法令の当てはめを踏まえないと確かめられない項目があります。前者は自分で確かめ、後者は確かめきれない項目として印を付けておくと、点検に出すときに要点が伝わります。
確かめやすい点と、確かめにくい点
| 区分 | 項目の例 | 確かめ方・難しい理由 |
|---|---|---|
| 確かめやすい | 別紙が空欄でないか、金額の計算が合うか、定義した用語が条ごとに同じ意味か | 書面の中だけで照合できる。印を付けて直す |
| 確かめやすい | AIが挙げた条番号が契約書に実在するか、法律の名称が現行か | 契約書とe-Govの条文を見れば分かる |
| 確かめにくい | 事業の実際の流れ(申込み、支払、提供、解約、返金)と書面が合っているか | 実態を知っているのは事業者本人。流れ図を作って照合する必要がある |
| 確かめにくい | 取引がどの類型に当たるか(通信販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供など) | 勧誘の方法と契約の中身の双方で決まるため、当てはめに判断が要る |
| 確かめにくい | 賠償の上限、違約金、免責の水準が妥当か | 取引の規模や立場で変わる。法令の観点と実務の観点の両方が必要 |
「確かめにくい」は、できないという意味ではなく、判断の材料をそろえてから確かめる項目という意味です。
点検に出す場合は、書面だけでなく、事業の流れの資料、料金表、申込み画面、関連する他の書類をそろえると、確かめにくい項目が確かめやすくなります。渡す資料の一覧は点検と仕上げの流れにあります。なお、紛争が起きている場面の書面や、相手方との交渉、裁判の見通しの判断は、このサイトでは扱いません。自社の取引の書類を整える範囲に限っています。
点検の位置づけは、AI契約書と弁護士法72条のページで法務省の資料にもとづいて整理しています。よくある質問はAI契約書のよくある質問に、用語の意味は用語集にまとめました。
印刷用の1枚版|30項目の一覧
ブラウザの印刷機能で、このまま1枚に出力して使えるように、30項目を種類ごとに並べました。四角に印を付けながら使ってください。根拠の区分や解説は、上の表で確かめられます。
1 会員規約・利用規約(会員制のサービス・コミュニティ)
- 申込みを承認しない場合の基準があるか
- 会費の決済方法・課金日・自動更新・料金改定の定めがあるか
- 禁止事項・除名・反社会的勢力の排除・会員間トラブル・秘密保持が運営の実態に合っているか
2 サービス提供約款・会則
- 約款・会則・規約の役割分担が決まっているか
- 内容・特典の変更と停止の権限、免責があるか
- 会則に秘密保持・禁止事項・除名・反社会的勢力の排除があるか
3 業務委託契約書(コンサルティング等・受託者側)
- 金額・追加費用が別紙まで埋まっていて、計算が矛盾しないか
- 業務範囲が有資格者の独占業務に及ぶ書き方になっていないか
- 成果物の著作権の帰属と利用範囲、賠償の上限と請求期間が定められているか
4 事業譲渡契約書
- 譲渡する資産の目録が実態の全部を覆い、譲渡しないものも書いてあるか
- 代金の支払と引渡しの順序が決まっているか(分割払い向けの条項が混ざっていないか)
- 許認可・指定が前提条件として扱われているか
5 製造委託・取引基本契約書
- 損害賠償の条の構造が壊れておらず、上限が他の条にも及んでいるか
- 数値・期日・営業日と暦日・但書が整合しているか
- 法律の名称が現行のものか(下請法から取適法への改称など)
6 プライバシーポリシー
- 利用目的を特定して書いているか(個人情報保護法17条)
- 外部サービス(生成AIを含む)への提供・委託・外国にある第三者への提供を整理したか(25条・27条・28条)
- 安全管理措置と漏えい等が起きたときの対応を書いたか(23条〜26条)
7 特定商取引法に基づく表記
- 返金・解約の欄が契約書・規約・申込み画面と一致しているか
- 申込み画面(最終確認画面)に必要な表示があるか
- 価格・追加費用の表示と、事業者情報を省略できる条件を正しく書いたか
8 NDA(秘密保持契約)
- 損害賠償の上限と、帰責事由の書き方
- 秘密情報の定義と、除外事由の書き方
- 存続期間・返還や消去・再委託先への開示が互いに整合しているか
9 受講契約書・申込書
- 中途解約・返金の定めが「全面禁止」になっていないか
- クーリング・オフが関係する取引の類型を整理したか
- 分割払いが割賦販売に当たらないか確かめたか
10 取引先との生成AI利用の取り決め
- 禁止にするか条件付きで認めるかを決め、「AI」の範囲を定義したか
- 入力してよい情報の区分と、学習されない設定の確認方法があるか
- 出力の権利・責任と、申告・記録・停止指示があるか
30項目を確かめたうえで、書面の仕上げまで進めたい場合は、点検と仕上げの流れを参照してください。料金は書類ごとの定額で料金表にあり、相談は無料です。自分で直すだけでも、上のチェックだけで見直しが進むように書いています。
根拠・出典
- [1]消費者契約法 8条の2・9条・10条(解除権の放棄条項・違約金等の条項・消費者に一方的に不利益となる条項の無効)e-Gov法令検索(法令API)で現行条文を確認(基準日:2026年10月23日) https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000061(確認日:2026年10月23日)
- [2]民法 415条・416条・420条(債務不履行による損害賠償・損害賠償の範囲・賠償額の予定)e-Gov法令検索(法令API)で現行条文を確認(基準日:2026年10月23日) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089(確認日:2026年10月23日)
- [3]個人情報保護法(個人情報の保護に関する法律) 17条・21条・23条から28条まで(利用目的の特定・取得時の通知等・安全管理措置・従業者の監督・委託先の監督・漏えい等の報告等・第三者提供の制限・外国にある第三者への提供の制限)e-Gov法令検索(法令API)で現行条文を確認(基準日:2026年10月23日) https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057(確認日:2026年10月23日)
- [4]特定商取引法(特定商取引に関する法律) 11条・12条の6・15条の3・15条の4(通信販売の広告表示・申込み時の表示・通信販売の契約の解除等・申込みの意思表示の取消し)e-Gov法令検索(法令API)で現行条文を確認(基準日:2026年10月23日) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057(確認日:2026年10月23日)
- [5]取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律) 題名と施行日(令和7年法律第41号による改正、施行は令和8年1月1日)(旧称は下請代金支払遅延等防止法)e-Gov法令検索(法令API)で現行条文を確認(基準日:2026年10月23日) https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000120(確認日:2026年10月23日)
- [6]不正競争防止法 2条6項(営業秘密の定義)e-Gov法令検索(法令API)で現行条文を確認(基準日:2026年10月23日) https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000047(確認日:2026年10月23日)
- [7]特定商取引法(特定商取引に関する法律) 9条・24条・41条・48条(訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供のクーリング・オフ等)e-Gov法令検索(法令API)で現行条文を確認(基準日:2026年10月23日) https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057(確認日:2026年10月23日)
- [8]割賦販売法 2条1項(割賦販売の定義)e-Gov法令検索(法令API)で現行条文を確認(基準日:2026年10月23日) https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000159(確認日:2026年10月23日)
- [9]AI事業者ガイドライン(総務省・経済産業省)第1.2版(令和8年3月31日)本編。第1.1版は令和7年3月28日、第1.0版は令和6年4月19日 https://www.soumu.go.jp/main_content/001064279.pdf(確認日:2026年10月23日)
- [10]個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」令和5年6月2日公表(別添1が注意喚起) https://www.ppc.go.jp/news/press/2023/230602kouhou/(確認日:2026年10月23日)
- [11]文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」令和6年7月31日 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/94097701_01.pdf(確認日:2026年10月23日)
よくあるご質問
チェックリストの項目が全部「はい」なら、書類は問題ないと言えますか。
言えません。30項目は、見落としやすい点の一部を一般的な観点で並べたもので、書類が有効か無効かを判断するものではありません。「はい」と答えられた項目は、その観点では確かめられたという意味にとどまります。事業の実態との照合など、確かめにくい項目が残っていないかも見てください。
自分の書類の種類が10種類にない場合はどうしますか。
近い種類の表を使い、書面の中の食い違い、空欄、用語の統一、取引の流れとの照合を確かめます。10種類以外の書類は、このサイトの点検記録の範囲外で、記録にもとづいた説明はできません。法令の確認点だけを手がかりに、確かめられる範囲を決めてください。
バッジが「AIの下書きの点検記録」の項目は、AIで作ると必ず起きるのですか。
必ず起きるわけではありません。AIで作った下書きの点検記録で見られた点という意味で、記録は3依頼者分にとどまり、種類によっては1依頼者分です。「AIで作ったから起きる」とも「他の作り方なら起きない」とも読まないでください。
AIに指示して、このチェックリストで書類を点検させてもよいですか。
点検の補助に使うことは差し支えありません。ただし、AIが挙げた条番号や用語が実在するかは、人が原本と照合して確かめる必要があります。AIの回答の確かめ方は、AIの回答・分析の確かめ方のページに手順を書いています。
30項目を確かめた結果は、記録に残すべきですか。
確かめた日、確かめた人、使った版の資料を記録に残しておくと、法令や指針の改訂で見直すときに役立ちます。取引先に説明を求められたときの根拠にもなります。項目ごとの結果を一覧にして、書類と一緒に保管する方法が分かりやすいです。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の書類が有効か無効か、どの条項を直すべきかは、事業の実際の流れ、取引の相手、書類の全体の構成によって異なります。書き方の例として紹介している内容は、型として作り直した一般的な例で、特定の事業者や書類を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で2026年10月23日時点のものを確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 文化庁 / 個人情報保護委員会 / 法務省 / 消費者庁